レマハノート

しくじりや やらかした事

散々なカラオケ大会

僕はバンドではギター担当ですが歌うのが大好きで、コロナが発生する前は同僚やバンド仲間や取引先の人やらとスナックやラウンジやカラオケボックスなどでよく歌っていました。シャ乱Qのシングルベッドが十八番です。

ある時、超お得意様取引先の会長から誘われてその企業の新年会を兼ねたカラオケ大会に出場する事になりました。

その企業は新年会にグループ企業の代表や代議士やら議員やら銀行の頭取など集めて毎年120人規模の新年会の中で数人がカラオケをやるというスタイルでやっていましたが、今回は少人数に絞って「選抜カラオケ大会」に変更して行われました。

会場にはステージと円形のテーブルの宴席が8つ、ステージの真正面に審査員席、プロの司会者とビデオ撮影の方とカメラマン、エントリー14人中5人が入賞、賞金や賞品の紹介がなされて、緊張とワクワク感が高まっていました。審査員は誰かの紹介でこの企業の会に初めて出席する日本コロンビアからCDを出している60代の女性演歌歌手でした。

事前打ち合わせで「ステージではまずエントリーナンバーと氏名と曲名を言って下さい」と指示されました。

トップバッターはかっぷくのいいしゃがれた声の○○市議会議長でした。見事に歌い上げて拍手喝采を浴びながらお辞儀をして終えたところで審査員からの講評が述べられました「なぜ前を向いて歌わないんですか?」と質問され、えっ!という感じで市議会議長が「いや~前ですか~?」と返すと審査員から「モニターの歌詞ばかり見ていてお客様の方を見ていないじゃないですか!もっと堂々と前を向いて歌いましょう!」とピシャリと返されて市議会議長は苦笑いしながらステージを降りました。

2番手は○○市議会議員でこの方もかっぷくが良くて声は太くてなめらかで上手でした。同じく見事に歌い上げて拍手喝采を浴びながらお辞儀をして終えたところで審査員からの講評が述べられました「なぜ口を開けて歌わないんですか?」今度はそう来たか!と思わず吹き出しそうになりました。市議会議員が「口ですか~?」と返すと審査員から「体は大きいのになぜ口は大きく開かないんですか?」「もっと大きく口を開けて歌いましょうね!」とアドバイスされて肩を落としてステージを降りて行きました。

3番手が僕でした。「エントリーナンバー3番○○です。松山千春さんの恋を歌います。宜しくお願い致します」と言ってお辞儀をして、イントロが流れて、歌が始まりました。前の二人に対しての指摘された所に気を付けてお客様の方を見ながら大きく口を開けて最後まで歌い切りました。拍手喝采でどうだ文句のつけようがないじゃろうと悦に入っていたら審査員から「あなたはどこか痛いんですか?」と質問されました。「いいえ何処も痛くありませんがどうかしたんですか?」と返すと審査員から「痛そうな顔をして歌ってましたよ!」と返されました。

どうも眉間にしわを寄せて歌っていたようでそこを指摘されたんです。ステージ上で恥をかかされた気分になり「なんなんじゃこのおばはんええかげんにせ~よ~」と思っていたら審査員から「でも一つだけ良い所がありましたよ!」「1番と2番の間のお辞儀が良かったですよ」と言われました。でも全く嬉しくありませんでした。

その後、10人が歌い、審査員から批評を浴びせられて、最後の1人となりました。

最後の1人は主催者の代表取締役会長で、いつもは毎年の新年会の最後に北島三郎の歌を歌って全員総立ち手拍子の後割れんばかりの拍手で盛り上がって締めの挨拶をして終わる、という流れが恒例になっていました。

ところが変な緊張感が漂っていたのか手拍子はまばらで立ち上がる事も無く会長の歌が終わり、審査員の講評が始まりました。「選曲が良くないです!会長の声に合っていません。声に会った選曲をしてください!」とみんなの前で否定的なコメントをされたんです。

常に堂々としてどんな人物とも渡り合って緻密で豪快で誰からも尊敬されるあの会長が今まで見たことがない泣きそうな表情になりました。

そして結果発表です!飛びぬけてうまい方はいなかったので僕自身は3位くらいには入るだろうと思っていました。ましてや14人中5人が入賞するんだから入賞は確実だろうと確信していました。ところが入賞さえしませんでした。「嘘だろう?」思わず口に出してしまいました。それに会長さえも入賞しませんでした。会長は僕以上にショックだったと思います。

最後に会長は気を取り直してなんとか元気に締めの挨拶をして閉会となりました。

先日その企業の副社長とその時の話になり「散々なカラオケ大会でしたね〜」と盛り上がりました。